2.1.5 寄宿学校制度が残した負の遺産に対して、教育の場ができること
カナダ先住民族の人々は、教育を通して自らの文化や尊厳を否定され、白人の言語と文化を押し付けられました。
ハーパー首相の謝罪の中でも引用された、「子どものなかのインディアンを殺せ” Kill the Indian in the child.”」という言葉が残っています。それほどまでの徹底した植民地主義の結果を償い、和解を実現するには、なんといっても教育の場が変わり、先住民族の価値に従った(あるいは先住民族の価値を取り入れた)教育システムをつくる必要があります。なぜなら、教育によって植民地主義が実現されたからです。そして、和解(Reconciliation)とは過去に対して行えばいいというものではなく、将来に向けて継続していかなくてはならないものだからです。
寄宿学校制度の歴史を正しく知り、それが遺した負の遺産がどういうものかを理解し、伝え、影響を受けた個人・家族・コミュニティを支え続けていくことが必要です。過去を学び、多様な価値を尊ぶことを知り、未来に向けた行動ができる人を育てるのは教育の役割です。
教育の場が変わることなしに、脱植民地化も和解もあり得ない。このことを、特に教育の現場にいる人、教育組織にかかわる人は自覚する必要があります。*
*この自覚を常に意識して忘れないために、カナダでは伝統的な土地に対する謝辞・承認(土地への謝意:Territory acknowledgement)が日々行われています。
カナダ寄宿学校を知る映像と教材
(注意 映像には、苛烈な虐待のシーンなどが含まれ、人によってはとても辛い思いをする可能性があります。)
- ダウニーが「シークレットパス」に描いた少年チャーニー・ウェンジャックの物語(前節参照)を、チャーニーの姉の語りで描いた映像。寄宿学校で子どもたちが「文化的な虐殺」を受けたことを表しています。寄宿学校では、多くの子どもたちが命を落としました。逃亡を図って途中で息絶えたチャーニー・ウェンジャックは、そうした多くの亡くなった子どもたちの象徴でもあります。
- ローワー・ポスト(ブリティッシュコロンビア州)にあった寄宿学校での体験を自ら語る動画
- カナダの寄宿学校制度の歴史について学ぶためのハンドブック(ヒストリカカナダ制作) コンパクトにまとまっており、写真資料も豊富に収録する。
Residential Schools in Canada, Education Guide (historicacanada.ca) - 寄宿学校について学ぶワークショップを行う際のガイドブック。
Workshop Activity Guide “100 Years of Loss; The Residential School System in Canada”
2022年03月18日更新