カナダ ユーコン

大学と先住民族との共働

1.4 ユーコン大学について

ユーコンカレッジは、1963年に職業技術訓練校としてホワイトホースのリバーデール地区に開学し、1983年にユーコンカレッジとなりました。1988年、ユーコンカレッジは現在のキャンパス(Ayamdigut campus)に移転し、2020年にはカナダ北緯60度以北初の総合大学として ユーコンユニバーシティになりました。
(参考:Our history | Yukon University

*このコンテンツは、葛西奈津子が在籍したユーコンカレッジでの経験、実践をもとに書いていますが、とくにユーコンカレッジとユーコンユニバーシティを区別しない場合にはユーコン大学と書き表します。

ユーコンカレッジのロゴには、ユーコンで見られる水鳥のLoon(アビ)が使われていました。ユーコンユニバーシティのロゴのモチーフはクロッカス(写真)です。クロッカスは、厳しい寒さの冬の後、春一番に咲き出すことから、ユーコンに住む人々のレジリエンス(回復力、しなやかさの意味)を象徴しています。

私が在学していた当時(2018-19)のユーコンカレッジの学生の内訳は、次の通りです。

・先住民族学生の割合:フルタイムの30%、パートタイムの25%
・学生の平均年齢26 歳 (フルタイムの学生24歳、パートタイムの学生29歳)
・単位認定課程の学生数1,252人、非単位認定プログラム所属の学生4,778人
・キャンパス数13 (うち地方コミュニティキャンパス11)          

ユーコンカレッジおよびユーコンユニバーシティでは、大学として全学生と教職員がユーコンのファーストネーションに関する知識のコア・コンピテンシー(中核となる能力)を身に着けることを求めています。また、伝統的な学びの方法や価値を取り入れたカリキュラムづくりや、教職員のためのファーストネーションに関する教育プログラムを提供する部門(First Nation Initiatives department :FNI) があり、ファーストネーションの世界観、価値観が学校運営や教育に反映されています。
(参考:Yukon University | Yukon University

出典:www.yukonu.ca ▲ユーコンユニバーシティの3つの基幹領域 (2019年資料)

【参考文献】
・ユーコンカレッジがユーコンユニバーシティになるにあたり、先住民族化(Indigenization:脱植民地化をさらに進めた概念)と大学のガバナンスに関してどのような議論と試行を経たのかをまとめた論文が出版されました。カナダのみならず、世界中で体験の共有と議論を広げたいとの目的で書かれています。ぜひご参照ください。
Staples, K., Klein, R., Southwick, T., Kinnear, L., Geddes, C. & Gingell, J. (2021). Indigenization and University Governance: Reflections from the Transition to Yukon University. Tertiary Education and Management, 27(3), 209–225.Retrieved from https://rdcu.be/cw4Fo

・上の論文中で、大学として実現を目指す”先住民族化”の2019年時点の定義を次のように紹介しています(p.210)。先住民族の価値だけを優先するのではなく、白人カナダ社会の価値と同じ重みで二つを編みこむ多元的なイメージです。

「ユーコンユニバーシティが進む先住民族化への道のりは、先住民族の価値・文化・言語・学び方や振舞い方が、プログラム・サービス・ガバナンス・指針・空間が織りなすユーコンユニバーシティという織物のなかに等しく認められ、包含され、一体化されることを基盤とする。」
(出典:FNIのスタッフCassandra Ivanyによる2019年のプレゼンテーション Ivany, Cassandra. (2019). Our indigenization journey. Presentation. )

・ユーコン大学の先住民族化戦略の道のりなどを紹介したウェブページ
   Indigenization at Yukon U

・ユーコン大学のユーコンファーストネーションズ・コアコンピテンシーについて
   Yukon First Nations Core Competency

2022年03月22日更新