B-2 コトニ
現在の札幌市でコトニというと、琴似、すなわち西区琴似地区を思い浮かべる人がほとんどでしょう。JRと札幌市営地下鉄の琴似駅があり、1875(明治8)年に屯田兵が入植した琴似です。しかし、コトニは本来そこよりも東側、現在の北海道大学の札幌キャンパスと植物園、それに知事公館にかけての地域を指す地名でした。アイヌ語の意味を探ると、「コッ・ネ・イ」すなわち、「くぼ地・になっている・所」ということのようです(山田1965:59)。
これはサッポロの地形と関係があります。サッポロ-豊平川が運んできた土砂や石が長年積み重なってできたのが豊平川扇状地です。その北の切れ目には、土地の低い所、すなわちくぼ地があります。そのくぼ地からは扇状地の伏流水が湧き出して、川となって流れます。B-1で紹介したサクㇱコトニ川とヌㇷ゚サㇺメㇺはその一例です。
この本来のコトニには複数の川が流れ、そこから北は低湿地であったようです。コトニ地区の一番東を流れる川がサクㇱコトニ川でした。その西側を、現在の北大植物園に端を発するセロンペッ(もしくはチェプンぺッ)が、さらにその西を現在の知事公館を源とするコトニ川が流れ、この3本が合流してコトニ川として石狩川に注いでいたようです。
これらの川には豊富に鮭が遡上していました。そこにアイヌがコタンを構えるのは自然なことでした。それはどんなコタンだったのでしょうか。
参照文献
山田秀三1965『札幌のアイヌ地名を尋ねて』楡書房。
2022年03月20日更新