カナダ ユーコン

大学と先住民族との共働

4.2.5 「ARCV140 アーカイブおよび博物館学」

文書、録音データ、写真などを収蔵するアーカイブ、モノを収蔵するミュージアム(博物館および美術館)の組織としての管理運営と、収蔵物の管理活用に関する網羅的な講義。履修科目中、最も専門的でなかなか理解できませんでした。カナダにおけるミュージアムが日本の博物館とは考え方が異なっているのも理解が難しいと感じた理由かもしれません。

最も印象的だったのは、第10週に学んだ「収蔵品の管理における課題:収蔵品の返還および収蔵品への市民のアクセス Repatriation and Community Access to Collections」の項目でした。アーカイブやミュージアムに収蔵されている物を、それを収集した場所や集団に属する人から返還を求められた場合にどのように対応するかという話題です。具体例として、先住民族の祭祀に用いる服飾品を返還した事例や、コミュニティの了解を得ずに持ち去られてストックホルムの博物館に収蔵・展示されていたトーテムポールの返還の事例などが紹介され、この問題への関心が一気に深まりました。
トーテムポールの事例は映像を見て質問に答える形式で学びました。類似の映像が公開されているので紹介します。

*この事例に関する文献: Jessiman, S. (2011). The Repatriation of the G’psgolox Totem Pole: A Study of its Context, Process, and Outcome. International Journal of Cultural Property, 18(3), 365-391. Retrieved from: doi:10.1017/S0940739111000270

トーテムポールは、祭祀に関わる物であり、年月とともに朽ちて倒壊し土に還る物であるというのが、本来のコミュニティの思想であるのに、ヨーロッパの博物館の考え方は、このような貴重な文化財を朽ちるがままにしておくことは看過できないとして、返還するにしても適切な収蔵庫を地元が用意するまでは博物館で保管するというものでした。どのような解決法があり、和解の道を経たのかを学びました。こうした事例を学ぶことは、現在、日本で議論となっているアイヌや琉球民族の遺骨返還を解決する上で示唆を与えてくれるはずです。

以下は、第10週「収蔵品の管理における課題:収蔵品の返還および収蔵品への市民のアクセス」のクラスで提示された参考文献や事例です。

ARCV140の教科書は以下の2冊です。いずれも実用的で参考になります。

Willie編. Standard practices handbook for museums. Edmonton: Alberta Museums Association.
Millar, L. 著. Archives: principles and Practices. London: Facet Publishing.
2022年03月18日更新