カナダ ユーコン

大学と先住民族との共働

2.2.1 ジェノサイド認める

2016年にこの問題に関する全国調査(National Inquiry into MMIWG,  https://www.mmiwg-ffada.ca/)が始まりました。2019年6月に最終報告書が発表され、この中でGenocide(ジェノサイド、集団虐殺)との表現が用いられました。これまでメディアや政治家が使うことに反発してきたこの言葉が、公式の文書の中で使われたことには大きな意義があります。またジェノサイドを結論付けた報告書をトルドー首相が受け入れ、現職の首相が自国内でジェノサイドが行われたことを認めた世界初の例となりました。

最終報告書
最終報告書「力と地位を取り戻す」は2380人の関係者の証言をもとに取りまとめられた。https://www.mmiwg-ffada.ca/final-report/

(参考)
https://www.mmiwg-ffada.ca/wp-content/uploads/2019/06/Calls-Web-Version-EN.docx
https://www.highnorthnews.com/en/missing-and-murdered-indigenous-women-and-girls-report-released

MMIWG全国調査は、失踪・殺害事件だけでなく、先住民族女性や子どもたちが暴力・差別・虐待を受けて自傷・自殺に追い込まれた数千の事例を、生き残った被害者や家族、コミュニティにヒヤリングしています。最終報告では、こうした事件の背後に植民地化主義と差別が共通してあること、それが今日もなお先住民族の人々が直面している暴力・殺人・自死の増加につながっていることを明らかにしたうえで、231の「正義の要求」(Calls for Justice)を提言しました。この要求には、警察、司法、医療、教育など広範囲にわたる分野の課題が含まれています。たとえば、下記のような内容です。

  • 生活に最低限必要な収入の保障
  • 安全で利用しやすい交通サービスの提供
  • 治安判事としてより多くの先住民族を採用すること(治安判事は、非法律家から選ばれて判事を務める市民ボランティア)
  • 先住民族の若者の死亡事例をきちんと検証すること

こうした勧告が出てくることからも想像できるように、実は先住民族女性の失踪・殺害事件が十分に捜査されていないこと自体が問題の一つであるため、具体的に何人が失踪し、殺害されているのか明らかになっていません。一説には1980年以来、カナダ全土でその数は4000人を超えるともいわれます。

2022年03月18日更新