ペルー アヤクチョ

武力紛争で奪われた家族の記憶

C-1 グレゴリオロペスルパイさんの帽子とポンチョ

犠牲者
グレゴリオ・ロペス・ルパイさん

グレゴリオ・ロペス・ルパイさんのポンチョ

 グレゴリオとドミティラ・ワマニ・キスペは結婚したばかりで、アンダバンバに住んでいた。1985年12月20日、ドミティラは3人の子どもと共に薪を集めに出かけ、グレゴリオは1人で家に残っていた。

 その時、兵士達が村にやってきた。村人は皆逃げ出したが、グレゴリオは何も恐れる理由がなかったので、落ち着いて家に留まっていた。しかしながら、兵士達はグレゴリを見つけると、残忍な暴行を加えた後、ルミワシ(パクチャ)の駐屯地へと連行してしまった。グレゴリオは、そのまま姿を消してしまった。数日してアンダバンバ村に引き返してきた兵士達は、グレゴリオの家を焼き払ってしまった。この展示物は、焼き払われた家の中庭に転がっていたグレゴリオのポンチョである。

 このポンチョは、グレゴリオの妻が紡いだ糸で義父が編んでくれたもので、アンダバンバの厳しい寒さから身を守るためによく着ていた。

 この帽子は農具小屋に残っていたもので、グレゴリオは畑仕事の時などによく被っていた。義母は、娘が旦那を思い出してはよく泣くので、残りの遺品を燃やしてしまった。この帽子とポンチョは失踪した父親の思い出として、子ども達が保管していたものである。

2022年03月18日更新