2.4.2 「真実と和解の日」とユーコン大学
2021年夏、カナダ各地の旧寄宿学校跡地から、子どもたちの遺体が発見されたことを機に、9月30日が新たに「真実と和解の日」として国の法定記念日となりました。
もともとこの日は、法定記念日・休日ではないものの、「オレンジ・シャツの日 Orange Shirt Day」とも呼ばれていました。オレンジ色は、かつてある少女が寄宿学校に連れていかれた際に来ていた服の色で、入学の際にその服を取り上げられ、白人社会の子供服に着替えさせられたことに由来すると聞きました。オレンジ色は、寄宿学校で失われた子どもたちの冥福を祈り、サバイバーの命を称え、先住民族の子どもたちの命と尊厳をまもることを目指す活動のシンボルとなっています。
私がユーコン・カレッジに留学していた2018年の9月30日は日曜日だったためか、キャンパス内の集会スペースではその週の木曜日に関連のイベントがありました。「和解とともにその先へ」とのテーマでの連続講演で、この日は寄宿学校のサバイバーであるエルダーのお話と、活動を引き継ぐ若者のプレゼンテーションでした。
上の写真、背景に立っている女性がオレンジ色のTシャツを来ていたり、スカーフを巻いたりしています。
オレンジ色のものを身に着けてこられなかった人のためには、手作りのリストバンドが配られました。
サバイバーでエルダーのハモンドさんが冒頭、自分の母語(伝統言語)で祈りを捧げたのち、自分の体験とこれからの和解に向けた提言を読み上げました。司会の女性らは感極まって涙し、集まった一同はスタンディングオーベーションを捧げました。
9月30日が初めて国の法定記念日となった2021年、ユーコン大学はどのようにこの日を記念したのでしょう。
ユーコン大学の公式サイトとfacebookページによると、9月30日当日は休校となり、コミュニティ内で行われる関連行事への出席を職員や学生に奨励しました。代わりに9月27日~29日の3日間、「真実と和解の日」の意義を浸透させるべくキャンパス内でさまざまな展示やイベントを行ったということです。たとえば、寄宿学校がもたらした世代間トラウマに関する著書「Miss it hurts」があるエルダーを招いたオンラインディスカッションや、図書館で関連するフィルム上映などが行われました。ブックストアでは、この本やオレンジ色のTシャツが販売され、購入した人にはカナダ真実和解委員会が制作した「和解に必要な94の行動のよびかけ(TRC mini booklets)」ハンドブックが配布されたということです。
私も、FNIによる寄宿学校のワークショップに出席した際に、このブックレットをいただき、傍らにおいてときどき中を見るようにしています。手のひらサイズで、コンパクトにまとまっています。
「真実と和解の日」のために上映されたフィルムのひとつ”Holy Angels”は、オンラインで日本からも無料で見ることができるものでした。
Holy Angels(2017年)
1963年、7歳で寄宿学校に入れられた女性の記憶を、語りと映像でたどります。名前でなく番号で呼ばれたこと、肌の色で差別を受けたことなど、母語を話すと叩かれ、どもるようになったこと、そして1歳上の姉と共に脱走を試みたこと。辛く悲しい思い出を淡々と語ります。インタビュー映像や当時の写真の他、子どもの心に映った寄宿学校の風景を印象的に描いた映像も挿入されていて、恐怖の体験を共有できるような気がします。皮肉なことに、Holy Angelsは通っていた寄宿学校の名称です。英語字幕付き。13分。(注意:人によってはとても辛い思いをする可能性があります)
【参考】YukonU marks Truth and Reconciliation Day with week of events